その42 変えることのできるもの、変えることの勇気 ニーバーの祈りの言葉

「フライト(原題FLIGHT)」(2012)という映画があります。監督はこのところCG作品ばかりが目立っているロバート・ゼメキス。「バック・トゥ・ザ・フューチャー(原題Back to the Future)」シリーズの監督と言えば分かるかと思います。

一見スペクタクルや法廷劇かと思いきや、さにあらず極めて落ち着いたヒューマンドラマになっています。主人公のウィトカー(デンゼル・ワシントン)は、元は海軍のパイロット。決して品行方正とは言えないのですが、どこか憎めない人物です。離婚して独り身で自由奔放、問題の事故の起こる朝も同じフライトに乗るCAと一夜を共にして、酒浸りの頭をドラッグですっきりさせて颯爽と機内に乗り込みます。決して誇れるパイロットではありませんが、ユーモアのある人物なのです。

そしてアクシデントは突然起こります。油圧制御が効かなくなり、機体は急下降を始めます。副操縦士はオロオロするばかりですが、ウィトカーは海軍時代の経験を生かしてか、二日酔いのアルコールで気が大きいのか、落ち着いています。なんと機体を背面飛行させて不時着させるのです。とはいえ、機体は大破してしまいます。不幸中の幸いなのか乗組員、乗客のほとんどは助かり、一躍ヒーローになるんですが、皮肉にも朝まで一夜を共にしていたCAは子供を助けるためにシートベルトを外していたため命を落としてしまいます。

この映画の重要な部分は実はここから始まります。ウィトカーからはアルコールとドラッグの反応が出でてしまいます。航空会社はその事実を隠そうと隠蔽を計ります。ウィトカーも自分の保身の為に嘘の証言を同僚に求めたりするのですが。離婚した家族に愛想をつかれ、孤独の中で少しずつ自分の人生と向き直り始めるのです。起きてしまったことは元には戻せませんが、これからの人生を、生き方を変えることは出来る、そんなことを思わせてくれます。

そんな中、ラスト間際に”ニーバーの祈り”と呼ばれるアメリカの神学者・ラインホルド・ニーバーの一節が登場します。(とはいってもラスト近く主人公あての激励の手紙のひとつが壁に貼ってあるだけなので観客は気がつかないかもしれませんが。)
今日はこの言葉を引用して紹介します。

God, Grant me
The Serenity
to the accept things I cannot change,
the Courage
to change the things I can
and
the Wisdom
to know the difference

神よ、変えることのできないもの、
それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ

変えることのできるもの、
それを変えるだけの勇気を与えたまえ。

そして、その変えられるか否かの違いを知る
叡智を与えたまえ。(訳著者)

この言葉の意味は非常に奥が深いです。自分自身を変える勇気というのは大変難しいことです。ある意味それは自己否定することを含んでいるからです。でも自分を変えるためにはその勇気を持たなければ変えることは出来ません。と同時にもう変えることの出来ないこともあります。犯してしまった罪や嘘、間違いなどはもう起こしてしまったことであり、そのために誰かを傷つけてしまっているかもしれません。そのために離れてしまった友もいるかもしれません。ですが、これからの自分を変えていくことは出来るのです。

みなさんもこの言葉の意味を考えながら学生生活を送ってみてはいかがでしょうか。
そして人生の生き方や考え方を改めて見つめ直してみてもいいのでは。

大学生の君に伝えたい104のこと

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